紫陽花に寄せて 片岡ちか

雨が降り続き、蒸し暑い日が続いています。みなさん、いかがお過ごしですか?

「花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身 世にふる ながめせしまに」
とはかの有名な小野小町の和歌です。

「花の美しい色はあせてしまったなあ。長雨が続く間に。私の美しい容貌も色あせてしまったなあ。私がぼんやりと物思いにふけって過ごしている間に」というのが歌意ですが、ここでは「ながめ」が「長雨(ながあめ)」と「眺め(物思いにふける)」で掛詞になっています。長く続く雨を物思いにふけりながら、見るともなく見ているというのは、今の忙しい現代人にしてみるとぜいたいくな時間の過ごし方だなと思ってしまいます…

さて長雨の中で、色あせるどころか、生き生きと美しい姿を見せてくれるのが紫陽花(あじさい)です。
以前、卒業した私のクラスの生徒が、小さな紫陽花の株を私にくれました。冬にはすべて葉を落とし、丸坊主になるのですが、暖かくなるとどんどん新しい葉をつけ、今年もきれいに額をつけています。

そしてまた別の卒業生は先日、甘茶を使ったスイーツを自分が関わって開発してアルバイト先のお店で出すことになったので、ぜひ食べに来てください、という連絡をくれました。そして甘茶は紫陽花から作られているということを教えてくれました。

長雨を、紫陽花ととともに、大切な思い出を思い起こしながら楽しみたいと思います。