「3行分かち書き」       石田 晋司

先日、実家で亡き父が旧制中学校に通っていた70年ほど前の大学ノートが見つかった。青いインクと赤いインクと鉛筆で一行の幅に3段で文字がぎっしりと埋められていた。

ごちゃごちゃして、読みにくい。

まず、赤インクの文字をたどり、次に上下をひっくり返し青いインクをたどり判読できた。

鉛筆の文字は青と赤のインクの下に沈んだように記されていて、読むに堪えられなかった。おそらく一度目は鉛筆で書き、その文字を上下に赤と青のインクで挟むように書き重ねたものだろう。

父は意外に勉強家だったんだな。

それにしても、戦時中は文具まで手に入らなかったのだな。

などと、父の学生時代に思いを馳せた。

さて、話は変わるが、書道をしてきた私は、和歌を色紙などに書くとき、わざと空間を広く取って1首を3行に分けて表現したりしてきた。「3行分かち書き」である。

もうすぐゴールデンウイーク。

久しぶりに筆を持って和歌1首を「3行分かち書き」してみよう。

2度目は上下をひっくり返し、3度目はずらして・・・すき間なく練習し、紙背に清書してもいよう。おそらく天国に居るであろう父に、少しは顔向けが出来るように。