心の隔たり      石田晋司

和歌山信愛に就職して半年が経とうとしている。新しい環境に身を置くときは誰しも感じることだが、4月は私一人が集団の中にポツンと孤立して存在しているような気がしていた。周囲の方々は私に色々配慮してくれていることはひしひしと伝わってくるのだが、それでも校舎に入ると、まるで空気が変わったかのような印象だった。

それでも、日々生徒の皆さんに関わりを持ちながら、すこしずつ環境に慣れてきて、今は、信愛が自分の職場であり、私は教職員の中の一人であると思えるようになってきた。

この心境の変化にはどんなメカニズムがあるのだろうと、改めてみた。

人と人との付き合いの一番の障壁は、やはり心の隔たりにある。それを解消するには、毎日少しずつ関わりを持つ人が増やし、周囲の人との心の隔たりを少しずつ下げてきてようやく所属する社会の一員になっていけるということだろう。

社会は新型コロナウィルスのために、マスクを外せない日々が続いている。行動の制限が学校にも及び、昨年は休校や分散登校を強いられた場面もあった。私たちは、社会全体で在宅勤務や、登校や出勤せずに済ませる社会を体験した。

学校でも一般社会でもITを使った技術が進歩し、新しい学びのあり方、新しい勤労のあり方が模索され、かつては近未来的と考えられた社会が否応なく近づいた気がしている。

反面、人と人が直接顔を合わせることが少なくなり、昨春大学に入学した人の中には1年間ほとんど大学に通わずすごした人も多いと聞く。人が顔を合わせることなく過ごす日々が続いた時、同じように入学した人との心の隔たりを下げることが困難となる。社会のいろいろな場面で人が他人と関わる機会が減少した場合の人格形成に与える影響については、今後その影響が様々な場面で生じることだろう。

少なくともコロナでマスクが外せない日々は、顔から得られる情報が半減されている。せめて、表情豊かに、ことわざにも「目は口ほどにものを言う」とあるように、目でのコミュニケーションも交えながら人間関係を構築していきたいと思う。