忘れるのも能力

みなさん、こんにちは。
吉田です。

コロナ禍で辛いですね。このストレスフルな中で大学受験に挑んでいる受験生たちは本当に大変だろうなと思います。ただでさえ辛い受験勉強がより一層辛いものになっているでしょう。

ところで、「私は覚えたことをすぐ忘れる」という悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。記憶力がいい人を羨ましく思う気持ちはよくわかります。しかし、「忘れる」のも能力だと思います。きっと人間は忘れるようにできているのです。

人間の脳とは少し違いますが、人工知能(AI)のことを少し書いておきます。今や私たちの生活の中に人工知能は至るところにありますね。代表的なのがみなさんお持ちのiPad のSiri です。「Hi, Siri! 明日の天気は?」という風に質問すると、「明日の天気は晴れ時々くもりです」みたいに返答してくれる、あの機能です。

AIはコンピュータに大量のデータを読み込ませて(学習させて)作ります。ところが、覚えさせるばかりでなく、一定の割合で忘れさせる方がパフォーマンスが上がるということが知られています。つまり、「覚える→また覚える→また覚える→…」より「覚える→少し忘れる→覚える→少し忘れる→…」の方が性能のいいAIを作ることができるということです。例えばTensorFlowというAIを作るキットにはDropout というパラメータ(設定項目)があり、Dropout の値を0.9に設定しておくと、覚えたことの10%はわざと忘れさせながら学習を繰り返す、といった具合です。

考えてみれば、目にしたあるいは耳にしたことをすべて覚えることができたら、逆に辛くないですか?テストで悪い点を取った、先生に怒られた、試合に負けた…など、忘れてしまいたいことはたくさんあります。都合の悪いことは忘れるからこそ、じゃあ次も頑張ろうという気になるものです。

都合いいことも悪いこともどんどん忘れて、でも本当に覚えないといけないことはまた学習して、また忘れて…を繰り返して知識は蓄積されていきます。「すぐに忘れてしまう」のは「頭が悪い」のではなく、反復をしていないだけではないかと思います。今のコロナ禍の辛さもそのうち忘れて、また楽しい毎日を送ることができる日がもうすぐそこまで来ていると思いたいものです。