JALの地上職員は小さな「っ」を使わない  十河秀彰

上阪徹さんの書籍(『JALの心づかい』(河出書房新社)を読むと、航空会社の多くのグランドスタッフが身につけている「身だしなみ」「表情」「立ち居ふるまい」などを学ぶことができる、おもてなしの原則をいくつか紹介する。

● 「統一美」を意識する
空港の雰囲気が好き、という人も多いと思うが、その空気案を作っているもののひとつに、間違いなく空港スタッフの姿がある。キリッとした雰囲気は、彼女ら彼らによるところが大きい。実際、パッと見てすぐにグランドスタッフとわかる。どうしてそんな印象が作り上げられているのかというと、「統一美」が意識されているから。統一されている美しさ、そろっている美しさ。髪型、化粧、制服の着こなし方などが、きれいに統一されているからこそ、あの独特の雰囲気は作り出されている。そして、そうした統一美を一人ひとりが意識している。

● お洒落と身だしなみは違う
新入社員の訓練で徹底的に教えられることは、「お洒落は自分のためにするもの。見だしなみは、お客さまのためにするもの」。「お洒落がしたければ、仕事を離れたところで、いくらでもすればいい。しかし、お客さまの前に出る仕事では、あくまで身だしなみを意識しないといけない」。

● 一方通行の挨拶から始めない
グランドスタッフが心がけているのが、相手も話しやすくなるような、相手から引き出せるようなコミュニケーションをすること。こうすることでニーズも聞き出せる。そのためにも、相手から言葉が返ってこないような発信はできるだけしない。例えば、「いらっしゃいませ」から始めない。これでは相手は返せない。では「おはようございます」ならどうか。引き出すようなコミュニケーションを目指している。最もハードルが高いのは第一声。挨拶の言葉は極めて重要。

● 小さな「つ」は使わない
新入社員の訓練では、学生時代の言葉から、社会人の言葉へと直していくのに、これを使っているという。そうすると、こういう言葉を使わなくなる。
「あっちから持ってまいります」
これが
「あちらからお持ちいたします」
に変わる。「あっち」「こっち」が「あちら」「こちら」に変えられる。

他にも「ウェブサイトをお客さま目線で見る」「ニーズの本質を捉える」「搭乗目的によって会話の雰囲気を変える」「感謝の言葉、肯定の言葉から入る」「日常での過ごし方が出る」など、興味深い原則がたくさんあった。みなさんの意識している原則とはどんなものでしょうか。