続けるということ 藤原 麻衣

ずっと探していたものがある。
それとは中学の美術の先生の紹介で出会った。そのシンプルさにビビビときた。その簡潔な言葉に惹かれた。簡潔でありながら、心に迫る強い意志を感じる言葉に。
ずっと好きだった。忘れたことはなかった。常に、探し求めていた。しかし時が過ぎゆくにつれ、思い出そうにも思い出せなくなる。探そうにも、手がかりがない。
毎年探してみるものの、中学生のころ、あの先生に紹介されたあのとき以来、再び出会うことはなかった。
ところが最近、CMでそれに似たものを見つけた。急いで検索し、とうとうたどり着いた。
私が探していたのは、「イチハラヒロコ」という現代芸術家だった。
現代芸術家。見つからないわけだ。私が「イチハラヒロコ」のことを知ったのはカレンダーだった。だから、毎年カレンダーが発売される時期になると、カレンダーのコーナーでおぼろげな記憶を頼りに探していた。しかし、「イチハラヒロコ」のカレンダーは大々的に市場に出回ることはなく、美術館や画廊で販売されているものだったのだ。見つかるわけがない。

こういうことがままある。「好きだ」と思ったはずなのに、忘れてしまう。小説、漫画、音楽、芸術作品…。そしてかすかな記憶を頼りに探し求める。たどり着いたものもあれば、いまだたどり着かないものもある。しかし、思い続けていれば、何かがひっかかるだろう。思えば、「イチハラヒロコ」にたどり着くCMを見たのはたった一度、それっきりだ。けれども、思い続けていなければ、CMがひっかからなかっただろう。タイミングが合えば、自ずと見つかるのだ。それが必要な時期に。そう思って、今も、いろいろなものを、なんとなく探している。

ただ「続ける」ということ。それが肝心なのだろう。