ウィルヘルム・フルトヴェングラー  現代に降臨!        遠藤 克彦

ドイツの大指揮者、ウィルヘルム・フルトヴェングラー(1886~1954)ほど、今日まで多くの音楽ファンに敬愛され、特別視されている指揮者はいないでしょう。戦中、音楽を政治的プロパガンダに利用しようとするナチス政権の思惑と自らの芸術的表現との狭間で苦しみながら自らの信念を貫いて戦った彼。そして逆に戦後は戦犯の汚名に苦しみながら、音楽表現の限界に挑み続けた彼。
このような巨匠の生き様は多くの音楽ファンの敬愛を集めています。またその火を噴くような怒涛の熱情と、哲学的な深い沈黙が交錯する、音楽表現の弁証法には、誰もが畏怖の情を覚えずにはいられません(笑)
この巨匠の1942年~1945年に行ったライブ実況録音集がこの度発売されました。なんとCD6枚組というボリュームで。1942年~1945年という世界史的にも混沌とした時代。この前後のドイツ・ヨーロッパの歴史、そして演奏は当時(現在でも)世界最高峰の西洋音楽演奏マシーンであるベルリン&ウィーンフィルハーモニー交響楽団、指揮者フルトヴェングラー。曲目はベートーヴェン、ブラームス、シューベルト、ブルックナー(まさにゲルマン魂!)。様々なことを考え合わせると、この演奏は、ヨーロッパ文明の栄光と死の両極を表現したものと言えるでしょう!(笑)

こんなの買ってしまってどうしましょう。また夜、寝られなくなってしまうかもしれません……。