和田 由紀

三十数年前の私の兄の結婚式の披露宴でのことだった。義姉となる花嫁の叔母のあいさつが今も忘れられない。「この子の祖父母は広島の原爆で亡くなり、叔父も二次被爆で若くして亡くなった」という内容だった。その人が、めでたいはずの披露宴でその話をした理由は忘れた。「その花嫁姿をおじいさんとおばあさんに見せてやりたかった」なのか、「だから、命を大切に幸せな人生を歩みなさい」なのか。
八月の暑い季節が巡るたび、今はもう鬼籍に入っているその人の涙した横顔を思い出す。
苦しみの果て亡くなったたくさんの人たちの命を無駄にしないためにも、二度とこの世界のどの国にも爆弾が落とされることのないように、私たちは注視していかなければならない。
原爆投下70年目のこの夏、その想いを強くした。