辻 英機 先生

私の家の周りには、たくさんの田んぼがあります。暑い夏を越え、張り裂けんばかりに実った稲穂がその重さのために頭を垂れ、収穫の時を待っています。先週は台風17号の影響で大雨や強風…十分に実った稲穂には大変過酷な試練だったと思います。田んぼの一部の稲が倒れてしまっているのをあちこちで見かけました。今でも十分に成長し、美味しいお米になれると思われますが、どうして台風の前に収穫しないのでしょうか?風雨で稲穂がだめになるかもしれない危険を冒してまで、収穫の時期を頑なに守るのはなぜでしょうか?それはやはり、そのリスクを冒してまでも手に入れたいものがあるからです。今、収穫しても十分おいしいでしょうが、これから収穫するまでの残りわずかな時間にまだまだ成長し、まだまだおいしくなることを農家の人は知っているからです。今はまだ刈るべき時期ではないのです。
高校3年生の皆さん、受験まで残り僅かだという焦りを持っていませんか?皆さんが目に見えて成長するのは、これからです。今まで勉強してきた時間より、これから受験までにかける勉強時間の方が短いことは明らかですが、この短期間に驚くほどの成長を遂げた先輩方を私はこれまでに何人も見てきました。稲穂に大風や大雨が吹きつけるように、今の皆さんにも苦しい気持ちになることがあるでしょう。だからと言って、本来の刈るべき時期でないのに、途中であきらめて投げ出してはいけません。何度も繰り返しますが、君たちはまだまだ成長します。大きく実らせて、収穫の時期をじっと待ちましょう。