水玉の向こうに見える、無限の力ー草間彌生さんを悼む 遠藤克彦

世界的な前衛芸術家、草間彌生さんが97歳でその波乱に満ちた生涯に幕を下ろしました。黄色い南瓜に刻まれたドット(水玉模様)や、画面を埋め尽くす巨大な網目絵画(ネット・ペインティング)は、世界中の人を魅了し、今や、現代美術の最高峰として歴史に深く刻まれています。

1929年に生まれた草間さんは、幼少期から壮絶な幻覚や恐怖に悩まされていました。視野一面を覆う水玉や、網目を必死で紙に書き留める行為は、自らの心の苦しみから逃れ、生き延びるための切実な表現でした。彼女にとって水玉(ドット)は、かつて彼女が克服しなければならなかった、忌まわしい強迫観念だったのです。

しかし、1957年、28歳の時、単身アメリカに渡り孤軍奮闘するなかで、その水玉は「世界に立ち向かう唯一無二の武器」へと昇華します。自分自身をも水玉の中に溶け込ませる「自己消滅」の表現を経て、彼女の水玉(ドット)は、他者・世界を拒絶するための記号から、地球や宇宙に存在するすべての生命と共存するための「愛のメッセージ」へと姿を変えていきました。

「私も水玉。あなたも水玉。」内なる生きづらさや苦痛を圧倒的な創造力へと変え、亡くなる直前まで絵筆を握り続けた草間さん。

生徒の皆さんも、ぜひ一度、美術館に足を運び、彼女の作品が放つ圧倒的なエネルギーを体感してみてください(ネットでも見れますが)。私も何度か、美術館で鑑賞したことがあるのですが、苦難を乗り越えて世界を包み込んだ彼女の作品は、私たち一人ひとりの存在を丸ごと受け入れ、勇気づけてくれる「肯定の力」ーあなたは、あなたであることで素晴らしいーに満ち溢れてますよ。いざ!美術館へ!