「災い転じて」進化する  遠田隆人

生命は地球に誕生してから、気候変動や捕食者からの攻撃、生存競争など、あらゆる「災い」にさらされ続けてきました。そして、それらの災いに適応できた個体のみが生き残ることで、特定の性質・能力を持つ集団(=生物種)が出来上がる…これが、私が高校や大学で学んだ、生物学における「進化」の概要です。私はこのことを初めて学んだ時、「結局、私たちは災いによって選ばれ、淘汰されることでしか進化できないのか…」と、少しやるせない気持ちになりました。

しかし、一昨日購入した科学誌によると、逆に「災い」を取り込み、利用することで起こった進化が近年明らかになりつつあるそうです。

その進化とは「EVE(Endogenous Viral Element,内在性ウイルス様配列)」と呼ばれる遺伝子の獲得です。どうやら私たちの先祖は、天敵であるウイルスの遺伝子を自らに取り込み、この「EVE」にすることで進化を遂げてきたようです。「哺乳類における胎盤の獲得」というターニングポイント的な進化を担ったのも「EVE」だということが明らかになっています。

現在私たちが体感しているように、ウイルスの引き起こす感染症は非常に大きな「災い」ですが、それを逆に利用することで大進化を成し遂げたというのは、「災い転じて福となす」ならぬ「災い転じて進化する」だなあ…と、一人思った一昨日でした。

さて、生徒の皆さんも今日から大きな災い(?)に突入しました。そう、「中間試験」です。試験は大変ですが、真剣に取り組み、戦い抜けば必ず、皆さんの力は大きく進歩します。この機を利用して、私たちの遠い先祖のような大躍進を目指しましょう!

※淘汰されるのをただ待つのではなく!