本来昨日アップすべきところでしたが、1日遅れとなってしまいました。申し訳ありません。
この夏休み期間を利用いたしまして、東京国立近代美術館で行われている「高畑勲展」に行ってきました!
みなさんは、高畑勲というアニメーターの方をご存知でしょうか。スタジオジブリの二大巨頭の一人、宮崎駿の盟友、と言われる方です。ちょうど夏休み期間中でもあり、金曜ロードSHOW!が3週連続ジブリ祭りをやっておりますので、ジブリアニメに接する機会も増えております。8月16日が『千と千尋の神隠し』、23日が『崖の上のポニョ』、そして今週の30日が『天空の城ラピュタ』というラインアップです。しかしこれらはすべて、宮崎駿監督作品であり、高畑勲作品ではありません(ただし、『天空の城ラピュタ』には製作(プロデューサー)として参加)。高畑勲監督作品と言えば、『火垂るの墓』や『平成狸合戦ぽんぽこ』、『かぐや姫の物語』などが有名です。
ところが、意外な作品の監督なども務めているのです。
まずは、『じゃりン子チエ』(1981)。大阪の下町を舞台に、小学生の女の子がたくましく生きていく姿を描いた人気漫画作品の映画化です。ジブリと言えば、宮崎作品に見られるファンタジーのイメージが強いですが、かなりディープなリアリズムのある作品です。
それから、『アルプスの少女ハイジ』(1974)です。これは監督ではなく演出ですが、実際には高畑勲が主導した作品です。ちなみに宮﨑駿は場面設定・画面構成で参加、小田部羊一がキャラクターデザイン・作画監督を務めておられます。小田部羊一は、現在NHKで放送中の朝の連続テレビ小説『なつぞら』でアニメーション時代考証、イラスト制作を行っておられます。余談ですが、中川大志演じる坂場一久(いっきゅうさん)は、高畑勲がモデルになっていると思われます(同じ東大卒)。本日放送分では「キックジャガー」というアニメをやっているという話になっておりましたが、言うまでもなくモデルは「タイガーマスク」です。
どんどん話がそれてしまいましたが、高畑勲は『ハイジ』に関しても徹底したリアリズムを追求しました。何と、アニメの世界では考えられないロケハン(現地調査)を行っているのです。ですから、アルプスの大自然が説得力を持ってアニメの世界で描かれているわけです。この『ハイジ』という作品、ヒーロー物が主流であったアニメ界において、それまでのアニメとは違い徹底して日常生活を描きました。これも、斬新な手法だったわけです。これは下手をすると単調でつまらない作品になってしまう可能性もはらんでいましたが、ロケハン等でリアリズムを追求した結果、アニメでありながら「嘘」のない「本物」を子供達に見せることができました。結果、『ハイジ』は現在でも語り継がれている人気アニメとなったのです(ただ、『ハイジ』が人気となった理由に関しては、やはり宮崎駿の存在は無視できないと思われます。キャラクターの動きや表情、画面の切り口には宮﨑駿の思想が大きく反映されています)。
「絵を描かないアニメーター」とも言われる高畑勲ですが、彼がアニメの世界で徹底して追求したのがリアリズムであったことから、次第に宮崎駿とは袂を分かつことになったようです。アニメ作品に対する根本的な精神が違うということでしょう。
そんな高畑勲ですが、晩年はアニメという技法そのものに対する挑戦をつづけました。従来アニメというものは、背景画の上にセル画をのせて動かしていきます。ですから、動く部分と動かない部分のタッチや色合い(絵具そのものが違う)が異なっていました。しかし、高畑勲はそのような違和感をなくすとともに、アニメでよくあるようなキレイな絵ではなく、スケッチのように手で描いた絵が動くような作品を追求していったのです。
その完成作品が、『かぐや姫の物語』でした。輪郭線をなくしわざと塗り忘れなどをつくることで、手描きのようなやわらかいタッチを実現しました。それゆえ、この作品はハリウッドでも高く評価されました。第87回アカデミー賞の長編アニメ映画賞にノミネートされたぐらいです(残念ながら『ベイマックス』に敗れ受賞は逃す)。
そのような高畑勲の軌跡が分かる「高畑勲展」、10月6日(日)まで東京国立近代美術館にて開催されています。ぜひぜひ、見に行ってください。私もDVDを借りて作品を見ようと思います!