昨日に引き続きNHKの大河ドラマ『いだてん』の感想です。
昨日述べさせていただいたとおり、第1部はすべて見たわけではないのですが、本日は第1部の感想を述べさせていただきます。
「いだてん」こと金栗四三(配役:中村勘九郎。顔や声の出し方が先代にすごく似てきた!)が主人公だったわけですが、第1話は完全に加納治五郎(配役:役所広司)が主人公でした(笑)。金栗はドラマ終盤、マラソン大会のゴールするシーンで登場しただけです。第1話は導入的な要素が強かったと言えるでしょう。そして、第2話では、金栗の幼少期にときがもどります。半ば無理やり前作の『西郷どん』につなげる西南戦争の話題も少し触れられますが、それは大したことではありません。それよりも、金栗は幼少期病弱で、体を鍛えるために学校まで走って通うという生活を始めたというところが面白いと思いました。当時は栄養状態も良くなかったと思いますし、医学もまだまだ発展途上でしたから、子どものうちに亡くなってしまう方は多かったと思います。金栗のその病弱さの克服方法がユニークです。さらに、走るときの呼吸法を研究し始め、「ススハハ」という2回吸って2回吐くという独自の呼吸法にたどりつきます。これは、私が走るときの呼吸法「スースーハーハー」よりも少しせわしないものですが、2回吸って2回吐くという呼吸法の根本は同じです。私がこの呼吸法をとるのは、小学2年生のとき、当時の担任であった先生(お名前は失念いたしました)がマラソンの呼吸法として教えてくださったからです。お陰様で、私はマラソンをまずまず走ることができ、大学のときの応援団・野球部合同マラソンでは応援団中2位、野球部と合わせて10位でゴールインできたほどです。野球部は50人くらいはいらっしゃったと思うので、まあまあ速いと思いませんか。もしかすると、小学校の担任の先生は金栗の呼吸法を知っていたのかもしれませんね。
そして、話は飛びます。何しろ、5月中旬まで見ていなかったのですから、15、6回は飛ばしていると思います。全国を走り回っていた金栗ですが、いつの間にか「先生」と呼ばれる立場になっており、弟子たちを集めて箱根駅伝を始めることになりました。そのころ、近所の女学生のシマ(配役:杉咲花)も、金栗に影響されてマラソンを始めていました。また、女子に対する体育教育が東京高等師範学校(現筑波大学の前身)でも本格的に始まっていきます。この辺は、シマが隠れた主人公のように、葛藤や成長が描かれていきました。そして、金栗のアントワープオリンピックでの挫折、女子教育者としての再出発と話がつづいていきます。
「女子がオリンピックに出場する!」これが、第20回くらいからのテーマになっていたように思います。シマだけでなく、金栗とシマの生徒たちもマラソンを始め、時代は明らかに変化の兆しを見せ始めていました。そして、二人が期待していた村田富江(配役:黒島結菜)をテニスで負かしたのが、日本人女性初のオリンピックメダリスト、人見絹枝(配役:菅原小春。ダンサーであり、アスリート役がぴたりとはまっている)でした。シマは結婚・出産で一時断念したオリンピック出場の夢を、この人見に託します。
しかし、第23回で描かれたのが1923年の関東大震災です。シマは生徒たちと浅草の凌雲閣(十二階)に浅草オペラを見に行くと約束し、そこでの待ち合わせ中に被災しました。はっきりとは描かれていませんでしたが、おそらく亡くなったようです。金栗たちはシマの捜索をつづけますが、第23回中では、シマの夫、増野(配役:柄本佑)が「もうどこかであきらめちゃってるんですよね」と泣き言を言い、金栗が励ましつづける様が描かれました。そして、第23回の最後には、仕掛けがありました。1960年代パートで5代目古今亭志ん生(配役:ビートたけし)が「どうも地震の話となると力が入っちゃうなあ」と述懐し、関東大震災の話題となったとき、弟子となっている五りん(配役:神木隆之介)が祖母が被災したと話し、その写真を披露したのです。何と、そこに写っていたのがシマだったのです。この『いだてん』のお話は、シマとその孫五りんが、重要なストーリーテラーとして一貫して描かれていた、というわけです。さすがクドカン。
第24回では、震災からの復興が描かれます。加納治五郎は相変わらず景気のいいことばかりをぶち上げ、多くの批判があるなかで復興運動会を開催します。そこでは、相変わらずシマの夫増野が妻の姿を探しつづけていました。そんななか、一人の女性が金栗のもとを訪れました。人見絹枝です。彼女は、シマからもらった手紙を取り出し、陸上をやることを決意した、と語ります。しかし、金栗から聞かされたのは、シマの被災ともう会えない、ということでした。そして、人見はシマの遺志を継ぐことを決意し、復興運動会の女子リレーに出場します。エース村田との一騎打ちになりますが、圧倒的な走力で人見は村田を破ります。シマは死んでしまったが、シマの心は生きている、その意志はしっかりと受け継がれていると、シマの夫増野はその姿を見て、どこか吹っ切れたような笑顔で涙するのでした。
自分で書いていても涙ぐんでしまうくらい、この数回のシマ物語は胸熱です。金栗四三や田畑政治が絡む部分は暑苦しい展開が多いですが、このシマのエピソードは、一服の清涼剤のようなものだったように思います。みなさんも、ぜひぜひ見直してみてください!