今月4日の日曜日、「高校物理基本実験講習会2016」にスタッフとして参加してきました。この講習会は、近畿の公立・私立の物理の先生方(先生の卵を含む)を対象として、実験の手ほどきをするというものです。受講生(現役の先生方)は6つのグループに分かれ、6つの実験を各40分ずつ体験する、という形式でした。私は桐蔭高校ほか公立高校の先生方とオシロスコープを使ってみる実験を担当しました。オシロスコープで写真のような図形(リサージュ図形)を描くことができます。
私はスタッフだったので、自分が担当するところ以外の実験を受けさせてもらうことはできませんでしたが、少しだけ見学する時間はありました。空中衝突(モンキーハンティング)、スペクトル分析など趣向を凝らしたものばかりでしたが、中でも弾性力の実験は示唆に富むものでした。
高校物理では、ばねやゴムひもは弾性体と呼ばれ、フックの法則に従うことを習います。フックの法則とは、弾性体を伸ばすと伸びに比例した弾性力がはたらく、というものです。ところがゴムひもで実験してみると、フックの法則が成立しないのです。
ここで、物理を勉強する上で気をつけなければならない大きな問題があります。我々が入試問題などの、いわゆる「問題」を解くとき、実は現実の物理現象を分析しているのではない、ということです。現実の物理現象をよく近似する「モデル」を扱っているにすぎません。「モデル」は理想化されているので、きれいな公式で扱われ、きれいな数字で答えが出てくるのですが、それはあくまでも「モデル」です。実験してみると「モデル」がいかに現実とずれているか、ということがよくわかります。きれいな答えが出てきた方が「解いた!」という実感があってすっきりするのですが、現実とはずれがあるということをしっかりと認識しておかないといけません。物理はパズルではないのです。実験講習に関わることで、このような物理の原点に立ち戻ることができ、大変有意義でした。