「気づき力 読書 幼稚園」   田福克裕

担任の高校2年生のクラスで「気づき力」を向上させようと話しています。常にアンテナを張って周囲を見て、その場にあった行動が出来る事。また自分の知らない事を「知ってやろう」という気持ち。人との良好な関係や、学力の向上にもつながると話しています。
クラスでも紹介したのですが、私の気づきの体験を2つご紹介致します。

一昨年度、中学2年生の担任だった時です。信愛では週に2日朝読書があります。
8時20分から40分まで、みんな読書を実施しています。担任は、読書中の教室に、そ~っと入ります。40分のチャイムで読書を止め、朝のお祈り、挨拶から連絡事項と進みます。

その日も40分のチャイムが鳴りました。一緒に担任をさせて頂いていた国語科の上田渉子先生はチャイムが鳴ったのに「はい起立」と言わないで、鳴り終わるまで待っておられました。30秒くらいして最後の「カンコーン」が鳴り終わってから「いいですか?じゃあ挨拶します。起立」を言われました。せっかちな私ならチャイムが鳴った瞬間に「はい起立」だったと思います。違う日に、同じ場面を見ていると、チャイムが鳴り始めると、生徒たちは本から目は離さずに、読むペースをわざと遅くしたり、逆に早めてキリの良いところまで読むなど、各自が調整していました。そのような終わり方をしていれば、「続き休み時間に読みたいな」「帰り電車で読むのを楽しみにしておこう」など継続した読書の習慣、朝読書を取り入れた目的も達することになります。私のようにチャイムで切ってしまうと「いいとこだったのに」など「もっと読みたい」には繋がらなかったと感じました。さすが教科柄の、きめ細かい配慮された指導だと感心しました。

もう一つは、信愛幼稚園での出来事です。私は中高の体育教員ですが、今年度は信愛幼稚園の体育授業を週に1日受け持っています。4月から秋までは年中さん。運動会以降は年中さんと年少さんを担当しています。

ある日、かけっこを行いました。約50人の園児は、約10人ずつ5組に分かれて、スタートラインについています。その表情は、これから行われるレースの白熱さを物語るような真剣そのものです。私は前方15メートルくらいに園児10人がまっすぐ走った時のゴールラインと両サイドに大きなカラーコーンを準備し、その中央へ立ちました。

「ここまで頑張れ~ よ~い ドン」とホイッスルの音がグランドに響きました。
元気にスタートした園児達、しかしなんと全員が私をめがけて走ってきます。園児どうしの間隔も狭くなり、怪我をさせてはいけないと片膝を地面につけ、手を広げました。全員が私に体当たり、怪我をする児童もなく良かったのですが、幼少時の児童は、真っ直ぐ走ろうと言っても目標物(私)に突進してきました。思えば自分もそんな感じだったような記憶が蘇りました。また片膝ついている私は、10人の園児に囲まれた時、「あっ、この子たちは毎日この目の高さで社会を見ているのだ」と気づきました。「子供には同じ目線で接する」発達心理学の講義を思い出しました。子供に限らず同じ目線でとは、「人の話を耳で聞く」のではなく「話を心で聞く」「気持ちを傾ける」など他者への心遣いにつながるのだと再確認させてもらえた出来事でした。

毎日の生活の中で、「心の入口」を少し柔らかく開いておくと「あっ、いつもの景色がこんな風にも見えるんだ」「自分はこう思っていたけど、こんな感じ方する人もいるんだ」などなど。
新しいことに、気づく・知るってことは『楽しい』こと。こんな感覚を今後も、生徒たちに伝えていけたらと思います。

PS
可愛い園児たちに体育を通じて「動」の元気を貰えました。せっかくの機会ですので、今週末に和歌山県立図書館で開催されている「信愛幼稚園の陶芸展」で園児たちの作品に触れ、次は「静」の元気を貰いに行こうと思っております。