つるべ落とし  和田由紀

つい先日まで「暑い、暑い」と言っていたが、最近めっきり涼しくなった。朝夕は寒いくらいだ。まだ10月だというのに今朝私は冬のコートを着て通勤した。

寒さも嫌なものだが、私はこのつるべ落としの頃が一年で最も嫌な季節だ。夕方になるとあれよ、あれよという間に暗くなる。寂しさとせつなさと底知れぬ孤独感に襲われる。その思いはもう数十年変わらない。真冬になってしまうと暗さに慣れてしまうのか、その寒さの厳しさのせいか、そんなセンチメンタルな気持ちも吹っ飛んでしまう。

だが、今年ばかりは「早く真冬になってしまえ」という思いはない。そう、冬は受験生にとって戦いの季節の到来を意味するからだ。今はただ「一日一日を大切に、準備をしていってほしい。」と望むばかりだ。陽光きらめく季節を笑顔で迎えられるように。