SGH運営委員会の大村です。
新着情報でも紹介した通り、5月13日(水)の14:30から本学体育館にて、高校1年生対象の信愛SGHプログラム「探求基礎(地域課題に関する研究)」がスタートし、連携先の4人の方をお招きして今後取り組みたい地域課題を選ぶためにパネルディスカッションを実施しました。
今回設定した地域課題とパネリストの先生方は以下の通りです。
「地域医療」:和歌山県立医科大学 上野雅巳様
「地域経済」:和歌山大学経済学部 上野美咲様
「地域防災」:和歌山市危機管理局危機管理部総合防災課 戸口善博様
「産業課題」:株式会社TREE、一般社団法人GreenEducation 水野雅弘様
最初に先生方の活動紹介の後、「和歌山の地域としての未来」や「高校生が課題解決型学習に取り組む価値や意義」についてディスカッションしていただきました。
本学がパネルディスカッションを主催、運営するのもおそらく初めて、まして私がパネルディスカッションの司会をするのも初めて、手探りでしかないこの企画の運営、非常に緊張しましたが、パネリストの先生方のご協力もあって無事終了しました。
これまで、和歌山には人口減少や高齢化、中心市街地の空洞化、そしていつかくる南海トラフによる大地震など課題が山積みで、生徒たちが社会に出た時に明るい未来を描くことができるのかと不安に思う部分もあったのですが、今回本学のプログラムに賛同していただいたパネリストの方々のディスカッションから、例えば、医療の面では和歌山県立医科大学が関西空港に一番近い医科大というメリットを活用して和歌山を医療特区として地域を活性化したいというお話や産業の面では、永続可能な農業としてみなべの梅栽培を世界農業遺産に登録し、それを用いて地域を活性したいなど和歌山の明るい未来に対する情熱を強く感じることができました。
しかし、同時にいつか来る南海トラフによる大地震では、和歌山市でも最大8mの津波が想定されているなど、目をそらすことのできない厳しい現実も提示されました。
また、同時にパネリストの先生方から「課題が多いことは、反対に解決能力を養い、知的好奇心や向学心を育てるというメリットでもある」、「地域コミュニティーの中心は高齢者、今こそ若い世代の力が求められている」、「問題意識を持つリーダーの存在が集団を変える」などと高校生がこのような学習に取り組むことへのエールもいただきました。
SGHというと、「世界で」活躍する人を育成することというように誤解されますが、本学ではそのような生徒だけを育成するつもりはありません。SGHの目的の中にも記されているように、「社会課題に対して主体的に関わることのできる人材を育成すること」に重きを置き、その舞台は、世界であろうが、地域であろうが、家庭であってもかまわないと考えています。
「誰かがやってくれること」ではなく、「自分たちのこと」と捉えること。
インプット学習ではなく、他者と協働しながら最善の解を導き、それをアウトプットすること。
高校1年生はその学習の第一歩を踏み出しています。
そして、最後に各パネリストの先生方からこれから生徒たちに考えてほしい課題が発表されました。
「地域医療」:和歌山県には全国平均以上の医師が存在し医療環境が整っている県とされているが、県内地域によっての偏在が著しい。その原因を追及し、医師偏在を解消するためにはどのような手段が考えられるか」
「地域経済」:中心市街地の空洞化は当たり前のこととなっているが、そのまちなか地域を恒常的に活性化させるためにはどのような手段が考えられるか。ただし、そのアイディアを実現させるための組織づくりや予算の捻出方法、そして将来的なビジョンまで考えること」
「地域防災」:市民の大規模災害に対する意識を向上させるためには、どのような手段が考えられるか。また、市民の命を守り減災へと導くためにどのような地域コミュニティーを構築するべきか」
「産業課題」:世界農業遺産に登録されることが予想されるみなべの梅システムの価値を利用して、衰退しつつある梅産業をいかにして活性化させることができるか。様々な視点から考えてみる」
今後もパネリストの先生方やそれらの課題に関わる様々な方々のお力をお借りしながら、ワークショップ、フィールドワーク、ポスターセッションを通して、最終発表に向けて取り組んでいきます。
「本気の大人に触れる」機会を通して、生徒たちに劇的な変化が生じることを期待しながら、我々も学年の先生たちと協力しつつ、ここから「探求基礎」の運営を模索していきたいと考えております。
今後の展開にご期待下さい。