かれこれ10年以上高校生の進路指導に関わってきましたが、どの学年にも心理学を志望する生徒が一定数居る気がします。
比較的文系肌の生徒が希望することが多いですが、最近の心理学は数学的な要素が含まれているので覚悟して志望しましょう(数学からは逃げられない…!)。
今回は、心理学の一端である、行動経済学の話です。
行動経済学の有名な理論と共に、学習でも同様の心理効果が働いていることを紹介します。
ハロー効果(きっと良いもの)
目立つ特徴が印象や評価に影響を与える。
例)〇〇賞受賞だから良いものに違いない。
学)〇〇絶賛の問題集だから新しく買おう。
→まずは既に持っている問題集を完璧にした方が良い。
サンクコスト効果(もったいない)
かけたコストを無駄にしたくない、という心理。
例)開発続行するほど赤字だが、これまでの開発費過多で中止できない。
学)この問題をすでに20分考えたから解けるまで時間をかけたい。
→3分考えて分からない問題は知識不足なので、解説を読む方が良い。
プロスペクト理論(損をしたくない)
人は損失を回避する傾向があり、状況によってその判断が変わる。
例)無条件で100万円、の方が、50%で200万円、より選ばれる。
学)入試の全ての問題で得点を目指す。
→難関大は5問中2問正解2問部分点(50%得点率)で十分合格圏内。
アンカリング効果(最初の印象が基準)
最初に与えた印象的な情報が最終的な意思決定に影響する。
例)通常価格1万円の50%OFF、の方が、通常価格5000円、より選ばれる。
学)この問題は数IIの図形と方程式を元に考えていく(はず)。
→別の分野の知識(数Cの複素数平面やベクトル)を用いた方が早い。
認知的不協和(矛盾の正当化)
人の考えと行動の矛盾を、別の考え方で正当化する。
例)揚げ物を食べると太る→我慢するとストレスで余計に太る、で正当化する。
学)〇〇大学に行きたいけど勉強はしたくない→今日は疲れたから明日から。
→今やらないなら明日もきっと言い訳してやらない。
現在志向バイアス(目先の利益を優先する)
将来の大きな利益よりも、すぐ手に入る利益を優先する。
例)今すぐ1万円、の方が、1年後の2万円、より選ばれる。
学)勉強による大学進学よりも、今の娯楽を優先。
→娯楽を選んだ結果、10年後の年収が200万円以上変わってくる。
ハーディング効果(集団から外れたくない)
多くの人々と同じ行動をとることに安心感を抱き、周りに同調する。
例)皆があちらに進んでいるから私もついていこう。
学)皆が志望しているから私もこの大学にしよう。
→自分の意思決定を他人に依存し続けて満足…?
うーん、身につまされます。
私自身も合理的な行動をしているとはとても言えません。
利益追求するなら、自身の行動は合理化しつつ、他者の行動は不合理な物として予測する、ことが良いのでしょうか?
となると…自身の行動の是非をAIに完全に合理的に決めてもらう…?
ディストピアじゃないですかー!!