(今回は長文になります。時間のない人は読み飛ばしてください。生徒の皆さんはテストが終わってから読んで下さい)
信愛一パンダとチベットを愛している北です。こんにちは。
もう10月ですが、夏の話をします。私はこの夏も懲りずにチベット文化圏に潜入して参りました。これで5度目です。
丈夫な私は高地も大丈夫!と、たかをくくっていたのですが、5度目にしてなんと初めて高山病にかかってしまいました! 自分でもびっくり。
今回の目的地は「アチェン・ガル・ゴンパ」というお寺さんだったのですが、早く行きたいばっかりにバスの乗り継ぎを繰り返し、急に高度を上げてしまったのです。
すると、海抜4000メートルを超えるアチェンに到着した頃には、頭はガンガンするし、吐き気もするしで、立派な高山病の症状が出てしまいました。
しかし、チベット好きにとって、チベットで病気になることはそう悪いことでもないのです。チベットには西洋医学とも漢方とも違う「チベット医学」がありまして、独特の医療を施してくれます。薬も他と違う。
これはチャンス!とばかりに、宿のご主人に場所を教えてもらい、体はしんどいけれども、期待に胸ふくらませつつ、診療所に向かいました。
一応教えてもらったところに到着すると、外に10数人の尼さんが列になって並んでいました。アチェンは住人のほとんどが尼さんなので、患者ももちろん尼さんばかりなのです。どうもお医者さんが遅刻しているようで、皆待っていたのでした。
私が列の最後尾に並び、周りの尼さんたちに「高山病でしんどい」と伝えると、皆病人のはずなのに、えらく気の毒がってくれて、抱きついてヨシヨシしてくれたり、アメを恵んでくれたりと、好待遇を受けました。そのうえ、列の一番前に私を連れて行こうとするのです。それはいくらなんでも悪いので固辞し、そのまま尼さんたちとジェスチャーを交えつつお話しながら、待つこと1時間。やっとお医者さんがやってきました。
皆さん、お医者さんは全員白衣を着ているものだと思うでしょ? でも、そこはチベット。お医者さんもやっぱりお坊さんで、赤い袈裟を着ています。ちなみにナースも尼さんです。だいたい4畳くらいの広さの小屋が診療所なのですが、中に入ると机があるだけ。何の医療器具も置いていませんでした。これでどうやって診察するのか?と思いつつ、私の番がめぐって来ました。
私はチベット会話の本を片手に一生懸命、「高山病・頭が痛い・食欲なし・夜寝られない・風邪ぎみ」など症状をうったえました。するとお坊さんは、私の腕をとって軽く脈をみた後、ナース尼さんに何かチベット語で話しました。するとナース尼さんが、小さな紙きれにサラサラとチベット語で何か書き、「これを持ってあちらへどうぞ」と渡してくれました。
えっ、これで終わりなん? もっとチベット医学独特の診療法があるんちゃうの? という私の心の声がお医者さんに伝わったようで、彼はニコニコしながら、注射を打つジェスチャーをしました。イヤ、それはかんべんしてください!とばかりに私が首をブンブン振りますと、お医者さんも周りの人達も皆笑っていました。いたいけな旅行者をからかうんじゃないよと思いつつ、私はお礼を述べ、小屋から出て、薬局(らしき建物)に向かいました。
やっぱりアチェンでは薬剤師さんもお坊さんでした。ちょっと男前でした。その人に先ほどの紙きれを渡すと、彼はゴソゴソと棚から2種類の薬を取り出し、「12元」と言いつつ私に薬を渡してくれました。12元=約240円。保険も使っていないのにこの安さ。どうも薬代のみで、診療代はタダのようです。さすがお寺の診療所! 良心的です。
その薬のおかげか、2日もすれば元気になり、お寺にお参りしたり、コルラ(巡礼)したり、尼さんとピクニックしたり、お坊さんとお茶を飲んだり、チベットの子どもと遊んだりして旅を満喫しました。
皆さん、チベットに行く時はいきなり高度を上げるのではなく、徐々に高い所に移動して、体を慣らしましょう。ただし、高山病になっても、チベットのお医者さんに診療してもらうという異文化体験もできます。おすすめです。ぜひ経験してみて下さい。